エゾゼミ類の鳴き声の聞き分け
今日の朝日新聞の夕刊を見たら、森林総合研究所東北支所の大谷英児さんらがエゾゼミ類の鳴き声を音声解析で聞き分けるのに成功したと報じられていた。
エゾゼミ類は自分にとってはあまり縁が無いセミだが、エゾゼミ類の鳴き声が互いによく似ていることは知っている。日本には、エゾゼミ Tibicen japonicus (Kato, 1925)、コエゾゼミ Tibicen bihamatus (Motschulsky, 1861)、アカエゾゼミ Tibicen flammatus (Distant, 1892)、キュウシュウエゾゼミ Tibicen kyushyuensis (Kato, 1926)、ヤクシマエゾゼミ Tibicen esakii Kato, 1958 の5種のエゾゼミ類が分布している。大谷さんらは、これらのうち、ブナ林に特有なコエゾゼミの鳴き声を聞き分け、ブナ林の分断化の影響を調べるのに利用しようということで研究していたとのことだ。大谷さんらは、さらに音声識別が可能な携帯装置を開発しようとしているとのことだ。
虫に縁の無い人にこの装置を使ってもらうことは、ブナ林の調査とために有効だろうと想像はつくが、自然観察者としては、装置に頼らず聞き分けられる耳を鍛えたいものだ。
日本に分布するセミで鳴き声の識別が困難なものにニイニイゼミの仲間 Platypleura spp. がある。7年間住んでいた石垣島にはヤエヤマニイニイ Platypleura yayeyamana Matsumura, 1917 とイシガキニイニイ Platypleura albivannata Hayashi, 1974 の2種のニイニイゼミの仲間が分布しているが、鳴き声での識別ができるようには思えなかった。ここ三重県にいるニイニイゼミ Platypleura kaempferi (Fabricius, 1794) の鳴き声も全く同じように聞こえる。
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コメント
明日から出張というのに、面白くてバックナンバーを読ませていただいています。
大谷さん(セミの会会員)には連絡して、ぜひともキュウシュウエゾゼミを入れていただくようにお願いしました。録音もお送りしたのですが、判別は容易とのことでした。
ただ、エゾゼミ属の場合、鳴き声で生息を確認してしまうのはやはり不安が残るような・・・。
生息を認めるのは簡単ですが、「いない」ことを証明するのは非常に難しいですから。
投稿: Zikade | 2006年12月19日 (火) 00時34分
面白いと言っていただいて、何だか気恥ずかしい気がします。
エゾゼミ類の鳴き声の判別が機械で容易にできるとすれば、人間の耳で聞いた場合でも容易なのでしょうね。ま、とにかく、今までエゾゼミ類にはほとんど縁が無いので、本物を聞いてみなければ何とも言えませんが。
ところで、「いない」ことを証明するのは、非常に難しいというより、不可能ではないのでしょうか。もっとも、ある基準をもって「いない」と決めることは可能でしょうけど。
投稿: Ohrwurm | 2006年12月19日 (火) 06時30分
>ところで、「いない」ことを証明するのは、非常に難し
>いというより、不可能ではないのでしょうか。もっと
>も、ある基準をもって「いない」と決めることは可能で
>しょうけど。
御意。だから、「いる」ことを判断するのには慎重にならざるをえないのですね。
エゾゼミ属は耳でも容易だと思います。ただ・・・人間は記憶が曖昧で、すぐに忘れてしまい、わからなくなるのだと思います。
投稿: Zikade | 2006年12月19日 (火) 08時20分