« 日本昆虫学会第66回大会へ(2006年9月15日) | トップページ | 日本昆虫学会第66回大会2日目(2006年9月17日) »

2006年9月16日 (土)

日本昆虫学会第66回大会1日目(2006年9月16日)

 朝ホテルでテレビのニュースを見ていると、台風13号が西表島を通過したとのことだ。中心付近の気圧は925hPa。強烈だ。西表島の上原では瞬間最大風速が69.9m/sを記録したとのこと。石垣島でも65m/sを越えたらしい。1997年4月から2004年3月までの7年間石垣島で暮らしたが、これほど強い台風は経験したことがない。今回の台風を含め、島を離れてから何度も強い台風が八重山地方を襲っているが、何だかちょうど強い台風がなかった期間だけ石垣島で暮らしていたような気がする。今回の台風は、中心付近の勢力は強いが、暴風域は半径150kmほどということでそれほど広くはないし、速度もそれほど遅くはないので、暴風で家に閉じ込められる時間はそれほど長くはないのではないかと思う。
20060916blog  学会の会場の鹿児島大学には路面電車で出かけた。電車に乗ると、学会に参加する人が何人も乗っている。一般講演が始まる30分ぐらい前には会場に到着。これから色々な発表を聴けると思うと心が踊る。
 午前中の一般講演の中の一つ。弘前大学を退官されてもう何年にもなる安藤喜一先生の「『オオカマキリが高い所に産卵すると大雪』は本当か?」を聴いた。安藤先生は定年退官された後も毎年のように学会で発表されている。安藤先生の発表は身近な昆虫を材料にした研究が多く、しかも常識や定説というものを疑っていて、いつも大変面白い。今年の発表もそうだ。40年間オオカマキリ Tenodera aridifolia (Stoll, 1813) の産卵場所を調べ、『オオカマキリが高い所に産卵すると大雪』という"定説"を確かめた人が本(『カマキリは大雪を知っていた』酒井與喜夫著、農村漁村文化協会刊、ISBN: 4-540-03114-7、2003年10月5日初版発行)を出して、しかも大変売れているそうだが、その"定説"を疑ったのだ。オオカマキリが大雪の年に高い所に産卵する理由として、大雪に埋もれてしまうと卵が死んでしまうので、それを避けるためだ、というのが暗黙の前提として存在している。この暗黙の前提は実は怪しいのではないかと、自分も前々から思っていたが、安藤先生はこれを野外で調査をして、実際に確かめたのだ。その結果は、「雪に埋もれていた方がむしろ孵化率が高い」というものだった。となれば、大雪の年にオオカマキリが高い所に産むとすれば、わざわざ孵化率を下げるようなものなので、そのような性質が進化する理由がないのだ。普段は自然のことに見向きもしないような一般の人は、人間が感じることができない何かをオオカマキリが感じて、それによって産卵場所を変えるという"定説"を「40年かけて調べた」という根気を評価したのかも知れないが、それは科学的な態度とは言えない。やはり、適切な方法によって採られたデータを誰にでも納得できるように解釈するのが、科学的な態度だ。
 午後の一般講演の最後は、自分の講演だ。いつもは生態学のセクションで発表するのだが、今回は初めて進化のセクションでの発表だ。シロジュウジカメムシ類(Dysdercus decussatus 種群)が輪状種ではないのか、という内容だ。聴衆の数はまずまず。学会発表の数を重ねてくるにつれ事前の発表練習をしなくなってしまい、本番では時間がなくなったりして考えたとおりに話すことができなくなってしまうことが多くなっていたが、今日は全く練習をしていなかったにもかかわらず、だいたい話したいことは話すことができた。社交辞令かもしれないが、何人かの人からは「面白かった」と言っていただけたので、素直に喜びたいと思う。
 夜は懇親会。様々な薩摩焼酎が並んでいる。飲む人にはたまらないだろう。自分はほとんど下戸なので、宴会はあまり好きではないのだが、色々な人と話ができるのは、やはり貴重な場所だ。Sさんの一般講演のときに質問したことがちょっと舌足らずだったので、懇親会の場でもう一度話をした。ま、それはそれでよかったのだが、そのSさんから、ひょっとしたら「○○○○」(本の題名)に出ている人じゃないですか、と言われてたじろいでしまった。確かにそうだから否定のしようが無いのだが、Sさんのような人から言われるとは思ってもいなかったのだ。ま、それはともかく、料理に奄美の鶏飯が出て来たのは嬉しかった。
 ホテルに帰り、シャワーを浴び、これを書いていると急に大粒の雨が降って来た。明日は台風が来そうだが、少しでも遠くにそれて欲しいものだ。

|

« 日本昆虫学会第66回大会へ(2006年9月15日) | トップページ | 日本昆虫学会第66回大会2日目(2006年9月17日) »

コメント

 テレビのニュースだけを見ていると全く報道されていなかったが、八重山毎日新聞のウェブサイトを見ると、台風13号は八重山地方に相当ひどい被害を与えたらしい。
 石垣島に住んでいたときも感じていたが、本土で被害が出ると、辺境での被害は全く報道されなくなってしまう。
 死者は出ていないようだが、みんな無事だろうか?

投稿: Ohrwurm | 2006年9月19日 (火) 23時15分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/182871/11961627

この記事へのトラックバック一覧です: 日本昆虫学会第66回大会1日目(2006年9月16日):

» カマキリは大雪を知っていた [自然観察者の日常]
酒井與喜夫著, カマキリは大雪を知っていた. (社)農山漁村文化協会 人間選書2 [続きを読む]

受信: 2006年10月 1日 (日) 15時02分

« 日本昆虫学会第66回大会へ(2006年9月15日) | トップページ | 日本昆虫学会第66回大会2日目(2006年9月17日) »