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2006年8月 7日 (月)

シマトネリコの樹皮をかじるカブトムシ

 Journal of Ethology Vol. 24, No. 3 が届いた。かなり個人的な理由だが、冒頭の論文にはちょっと衝撃を受けた。その論文の主な内容は、カブトムシ Allomyrina dichotoma Linnaeus, 1771  がシマトネリコ Fraxinus griffithii CB Clarke の樹皮をかじって、樹液をなめる、というものだ。極端に言ってしまえば、ただそれだけだ。
 カブトムシと言えば、普通は他の昆虫などによってつくられたクヌギ Quercus acutissima Carruth やコナラ Quercus serrata Thunb. ex Murray などの樹皮の傷から滲み出す樹液をなめるのが普通だが、腐った果実にも来るから、食性が狭いというわけではない。しかし、自分で植物に傷をつけて、そこから滲みだす樹液をなめるというのは、新しい知見だということらしい。
 実は、もうかなり昔の話だが、岩手県雫石町に自生するデワノトネリコ Fraxinus japonica Bl. var. stenocarpa (Koidz.) Ohwi. の細い枝に集まる多数のカブトムシを見たことがある。よく見てみると、カブトムシが自分でかじった樹皮から滲み出す樹液をなめていた。そのときは、そういうこともあるもんだ、と思って、特に目新しいことだとは思わず、どこかに報告しようなどとは考えもしなかった。しかし、実は新しい知見だったらしい。これが報告になっていれば、自分が発見者ということになっていたことになるが、そうとは思わなかった自分が不勉強だったのだから仕方がない。
 この論文では、調査地の京都では在来ではないシマトネリコが摂食の対象になっていたが、自分が観察したのも、シマトネリコと同じトネリコの仲間のデワノトネリコだ。トネリコの仲間の樹皮には、カブトムシにとって魅力的な何かが含まれているのではないだろうか、と思う。
 カブトムシのかじりとり行動の映像は動物行動のデータベースのサイトで見ることができる。
http://www.momo-p.com/showdetail-e.php?movieid=momo050525td01a
 この論文ではカブトムシの学名が Trypoxylus dichotomus septentrionalis になっていたが、どちらが有効なのか、自分にはよくわからない。

参考文献

  • Hongo, Y. Bark-carving behavior of the Japanese horned beetle Trypoxylus dichotomus septentrionalis (Coleoptera: Scarabaeidae). J. Ethol. 24: 201-204, 2006.

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コメント

ウチで飼っているカブトムシの飼育容器に100円ショップで買ってきた「朽木」を入れますと、例外なく樹皮がひっぺがされて丸裸になってしまいます。それで「カブトムシは自分で樹皮をめくって樹液を出させるに違いない」と思ったのですが、どこのサイトを見ても「樹液はボクトウガが・・・」とか「カミキリの穿孔・・・」といった記述ばかりで「おかしいな」と思って居ました。この件に関する納得の行く答を拝見したのは、私にとってはこちらが最初です。このことが2006年に「新しい知見」として論文に掲載された、なんてのは、これまたビックリです。なんだか昆虫を対象にする学問って、素人でも2、3年で立派な成果が出せそうな世界(未開?)みたいで、うらやましぃですね。

投稿: あんぽんたん | 2009年7月27日 (月) 17時29分

あんぽんたんさん、コメントありがとうございます。
 昆虫の世界は、それこそ「何でもあり」の世界だと思いますので、それに気づくかどうかという観察者のセンスが、それが新知見となるかどうかにかかってくると思います。
 ボクトウガの幼虫が樹皮を傷つけて樹液を浸出させていることは確かだと思いますが、樹液を出す原因がそれだけではないというのも事実です。
 ぼくも、デワノトネリコの細い枝を齧っているカブトムシを見つけたときには「おや?」と思ったのですが、その時にはごく普通の当たり前のことだと思ってしまい、結果的には「新知見」を見過ごしてしまいました。論文を見たとき、ちょっとしたショックを受けたと言わざるをえませんでした。

投稿: Ohrwurm | 2009年7月27日 (月) 20時00分

早速のレス ありがとうございます!
そうですね こんな ポピュラ~な 虫ですし、飼ってますと 当たり前のよ~に 樹皮を 剥がしますので、私も「当然の、よく知られた習性」なんだと思ったのですが、MIXIなどのコミュニティではそういう観察例を全く見かけなかったものですから、検索サイトで記述を探し始めた次第です。しかし、もしもこちらのサイトにたどり着けず、何も見つけられなかったとしても、今世紀に入って論文で報告されるような事象だ、などとは決して思わなかったことと思います。
樹液サイトって、樹皮が広く大きくめくれたり剥がれたりしている箇所が結構ありますが、ボクトウガやカミキリによる傷って、そんなに広がるような性質のものなのでしょうか?これから探してみようと思ってますが、まだ不勉強でわかりません。飼育箱内の樹皮がめくられたのを見た時、「あの大きなめくれは、ひょっとするとカブトムシなんかの力によるのではなかろうか?」と思いました。

投稿: あんぽんたん | 2009年7月28日 (火) 08時51分

あんぽんたんさん、Ohrwurmです。
 カブトムシにはクヌギやコナラなどの太い木の固い樹皮を齧るのは難しいのではないかと思います。トネリコの仲間の細い枝は樹皮が非常に柔らかいです。ですから、カブトムシでも簡単に齧ることができるのだと思います。
 クヌギやコナラの樹液場がどのようにしてできるのかはよく知りませんが、最初は枝が折れたような場所から始まり、様々な生き物の力によって大きくなるのではないかと思います。カミキリムシの脱出口も、樹液が出る最初のきっかけになると思います。
 ボクトウガは、おそらく最初から自分で樹液を出すように齧る能力はなく、おそらく既に樹液が出ているようなところで暮らして、常に樹皮の下を齧って、樹液が出続けるようにしているのだと思います。あくまでぼくの想像ですが。

投稿: Ohrwurm | 2009年7月28日 (火) 20時26分

ありがとうございます。
なるほど ボクトウガ(幼虫?)ですら 最初じゃなぃんですか。 勉強になります。
ウチで飼ってます カブトムシは 100円ショップで 買ってきました「クヌギ朽木」(あんまり 朽ちていません。 殆ど 生木 です。直径は7~12cmほどのもの)の ぶ厚い樹皮を いとも簡単に 一晩か二晩で丸々 剥がしてしまぃます。  生きた木は 確かに もっと しっかりしてるとは 思いますが 酒場は 結構 弱った木が多く 枯れる前の カミキリムシ(?)の プチプチ とぃう ホジクリ音が 断えないよ~な 木や、 もう 地肌を 見せてしまっているような 樹液サイトの縁なら 多少は広げられそうな 気がします。 群馬昆虫の森 の ライブカメラを 見ていますと 樹液は樹皮の剥げた 境目から 出てまして 強いカブトムシは 境目に 必死に 頭を 突っ込んでいます。 削っている というよりは 必死で 出てくる樹液の 滲み出し口を あさっている という感じ ですけれども、ウチのカブトムシ達の様子を見てますと、シ~ズン開始の 樹液の 出始めは、ひょっとして カブトムシの力で・・・ということも ありそうな気がしてしまぃます。
 不思議の世界。 興味が 尽きません。

投稿: あんぽんたん | 2009年8月 1日 (土) 18時52分

あんぽんたんさん、あまりぼくの考えを信じないで下さい。あくまで想像です。ボクトウガのこともまだよくわかっていないはずです。ボクトウガの産卵場所の選択も、大変面白い研究テーマだと思います。とにかく、真実に迫るには、観察の積み重ねあるのみだと思います。

投稿: Ohrwurm | 2009年8月 1日 (土) 22時10分

はじめまして。
「シマトネリコ カブトムシ」と検索に入れたら、こちらに辿り着きました。

昨日、知り合いの方に「うちの木にカブトムシがいるから、取りにおいで」と言われ、息子と一緒にそのお宅の庭に行きました。
すると、1本の木にカブトムシが鈴なり!
樹高3m程の木でしたが、少し離れた場所から見ただけで、カブトムシが30匹は軽くついているのがわかる程でした。
しかも、根本から枝先までビッシリ。
クヌギでもコナラでもなかったので、不思議に思い木の名前を聞いたところ、「シマトネリコ」という木だと教えてもらいました。

知り合いの方によると、木を植えてから今までこんなことは無かったそうです。
人にあげてもあげても次から次へと飛んでくると言っていました。

息子がシマトネリコの木を欲しがり、庭に植えるかどうか悩んでいる所です。
息子の願い通りにカブトムシが飛んできてくれるといいのですが・・・。
でも、こればかりは植えてみないとわからなそうですね!


投稿: そらまめ | 2009年8月 5日 (水) 08時10分

そらまめさん、はじめまして。
 シマトネリコとカブトムシは何の関係もないように思うのですが(シマトネリコは南西諸島に自生していますが、そこにはカブトムシはほとんどいませんので)、どういう脈略で「シマトネリコ カブトムシ」と検索をかけられたのか、そのあたりを伺いたいと思います。
 九州以北では、コバノトネリコとか、もっと北の方では、いわゆるホントネリコとかデワノトネリコになると思うのですが。
 シマトネリコって、そんなにポピュラーな植物なんでしょうか?

投稿: Ohrwurm | 2009年8月 5日 (水) 19時48分

レス、ありがとうございます。

最初、知人に木の名前を教えてもらった時はシマトネリコだけで検索してみました。しかし、どのサイトにもカブトムシの事は全く書かれていなかったので、試しに両方入れて検索した所、こちらに辿り着いたのです。

私は今回知人に聞くまではシマトネリコという木があるということすら知りませんでした。でも、調べてみると意外とポピュラーなものらしく、昨日ガーデニングセンターに行ったら売っていました。一時は人気が高まって値段も高かったようですが、1m程の株が980円で購入出来ました。

シマトネリコが自生する所にカブトムシがあまりいないというのには驚きです。シマトネリコの木に吸い寄せられるようにたくさんのカブトムシがくっ付いていたものですから。
いつもならクヌギやコナラの蜜にいくカブトムシが、温暖化や今年の冷夏の影響などで蜜が出ないクヌギなどに代わってシマトネリコの木に来たのかな?などと思いました。

まだ、新しいことだったんですね!
なんか、偶然にもそれを見れた事に少し嬉しさを感じます。

投稿: そらまめ | 2009年8月 6日 (木) 08時06分

そらまめさん、どうも。
 シマトネリコは園芸店で売られているんですね。知りませんでした。ぼくにとってシマトネリコは、ダルマカメムシ類が集まる木、という印象です。
http://ohrwurm.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/post_c87a.html
 ぼくがデワノトネリコに集まるカブトムシを見た印象から、トネリコにはカブトムシを誘引する何らかの物質があるように思えます。あまり小さい木では無理かも知れませんが、ある程度大きくなれば、カブトムシが寄ってくるのではないでしょうか。

投稿: Ohrwurm | 2009年8月 7日 (金) 07時01分

ご無沙汰してしまいました。
しつこく付きまとってしまい、申し訳ございませんです。科学的興味から、であり、決して悪意はございませんので、お許し願います。
おもしろい展開になってますね!
先日帰省しまして、越前海岸で磯遊びをしました。
偶然、ムラサキクルマナマコ と思われる 不気味な生物を捕まえました。帰って図鑑などを調べて初めて名前を知ったのですが、「相模湾以南に生息」とあり、驚きました。
同定が間違いないとしますと、そういった南方系の生物がかなり北でも生きられるようになった、ということかも知れません。蝶などでも、同様のことが報じられていますね。今後シマトネリコが本州で沢山栽培されるようになりますと、これがカブトムシにとっては「未知の大好物の発見」となって、新しいトレンドに なったりしそうで、面白いなぁ と 思いました。
生息域が異なるために、互いに知らなかったもの同士が、こうしたきっかけで関係を生じる、ということは、あって良いこと ですよね。 それが「自然」であるか、は ともかくとして。
「シマトネリコ・・・」の論文が最近になって掲載されたことも、「本来異なる地域で生息する生物同士」であったため、ということも、あるのでしょうか。何にしても、そらまめさんのご経験を、大変興味深く拝読しました。

投稿: あんぽんたん | 2009年8月17日 (月) 16時18分

あんぽんたんさん、こんにちは。
シマトネリコとカブトムシとの間と同様の関係は、ぼくがデワノトネリコとカブトムシとの間で見ていますので、分布の拡大の話とは直接は関係ないと思います。しかし、分布が重なっていなかったためにお互いに関係を持つ事がなかった生物の分布が広がって関係を持つようになる事はしばしばあります。侵入害虫や移入種の問題はその典型的なものだと思います。

投稿: Ohrwurm | 2009年8月17日 (月) 17時14分

そうですね。
ただ シマトネリコが 元来 本州などには 生えていなかったもの としますと カブトムシ にとっては 同じ科 に 属する樹木 とはいえ 未知の食べ物 ですよね?
今後 本州のカブトムシ生息域の近辺で シマトネリコ栽培が もっと ポピュラ~に なって行くにつれ カブトムシがこれを 傷つける害虫 として 認識されるように なっていったり するのかな と 思いました。
カブトムシは果樹園などの 農家では 害虫扱いのようですが 樹木の樹皮を ちょっと傷つける程度では 害虫とは 認識されないのでしょうか?
最初に 触れて居られました デワノトネリコ についても 「珍しい行為」 として 認識して居られたようですが その程度の 頻度なら 果実を傷めるケ~ス のようには 嫌われずに済むのかな と 思いました。
しかし、そらまめ さんが ご覧になられたように 大して大きくもない 木に 鈴なり に たかってくるようですと(それほどまでに シマトネリコは カブトムシ にとっては 魅力的なのかも)、ちょぃと 気になりました。
ウチの場合、ナミアゲハの幼虫に ボウズにしてもらうために ユズの苗木を 買ってくるような家ですので、カブトムシが訪れる庭 に 憧れる者として ウチにも 植えてみたくなりました。 

投稿: あんぽんたん | 2009年8月19日 (水) 12時57分

あんぽんたんさん、お返事遅くなりました。
被害額が対策にかかる費用よりも小さければ、害虫とは言えないでしょう。バタフライガーデンならぬビートルガーデンというのは、洒落ていると思いますよ。

投稿: Ohrwurm | 2009年8月28日 (金) 20時27分

bleah本日朝九時ごろ、庭に生えている恐らくシマトネリコの樹に20~30匹ほどのカブトムシが樹皮をはいで樹液をなめているのを発見しました。例年この時期になると甘い香りがする花のようなものが咲きいろいろな種類の昆虫が遊びにきますが、気づかなかっただけなのかあるいは今年からなのか不明ではありますが、カブトムシがいます。
庭に一本しかないトネリコのしかも大都会ではないのですが幹線道路や電車の駅にも至近の地でこのような事態には驚かされました。
私は45年ほど前に家の周りで一生懸命カブトムシを探したのですが、都会であり殆どお目にかかった記憶がなく、家で飼っているカブトムシは皆デパート出身でしたから。

投稿: boatman1957 | 2010年7月 7日 (水) 12時53分

boatman1957さん、コメントありがとうございます。
  boatman1957さんはどちらにお住まいでしょうか?カブトムシはちょっとした林があれば、街の中にも棲息していそうな気がします。
 トネリコの仲間はカブトムシが好きな匂いでも出しているのでしょうね。

投稿: Ohrwurm | 2010年7月 8日 (木) 20時16分

住居は尾張旭市です。ロケーション的には名古屋市との市境にすんでいますので600メートル程で名古屋市ですね。
本年はカブトムシの大量発生の年なんでしょうかね?

投稿: boatman1957 | 2010年7月10日 (土) 18時43分

boatman1957さん、こんにちは。
 尾張旭なら丘陵地で林も残っているでしょうから、カブトムシはたくさんいるでしょうね。

投稿: Ohrwurm | 2010年7月10日 (土) 19時54分

しかし尾張旭市に住んではや十年経ちますが今回のようなケースは初めてです。
もう近所のお子さん達が一本の木から100匹以上捕獲をしたと思われます。
これまでの十年には庭でカブトムシは一匹も見たことがありませんでしたし、近隣の森林公園等にわざわざカブトムシ、クワガタムシウオッチングに出かけたのですが、殆どお目にかかったことはありませんでしたが・・・
今年は通常ではないですね。
異常とも思いませんが・・・

投稿: boatman1957 | 2010年7月20日 (火) 17時55分

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