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2006年8月24日 (木)

ハサミムシファン

 今日まで夏休みをとっているので、仕事でオオハサミムシ Labirura riparia (Pallas, 1773) を扱っているという話を出すのは、まったくこじつけに過ぎない。理由は最後に書くことにする。
 オオハサミムシは汎世界的に分布しており、日本のハサミムシの中でももっとも普通に見られる種の一つだ。しかし、一年をどうやって暮らしているか、という点に関しては、信頼できる報告を見つけることができないという点で、やはりよくわかっていない種だと言わざるを得ない。
 学生時代にはハサミムシの生態で修士論文を書いた。その頃、いろいろハサミムシを見たが、修士論文で主に扱ったのは、コブハサミムシ Anechura harmandi (Burr, 1904) とヒゲジロハサミムシ Gonolabis marginalis Dohrn, 1864 の2種だ。
 コブハサミムシは年2回発生するという記述がなされている図鑑もあるが、自分が調べた結果では、明らかに年1回しか発生しないことがわかった。間違った記述がなされている図鑑を弁護すれば、成虫の活動が盛んになる時期が年2回あることは確かだということだ。
 この経験から、図鑑に書かれていることは確かな根拠に基づいたものばかりではない、ということがわかった。ハサミムシなどという、アマチュアの愛好家や研究者があまり目を向けない分類群では、これも仕方がないことだろう。
 その後、盛岡に住んでいた頃、クギヌキハサミムシ Forficula scudderi Bormans, 1880 が3齢幼虫で越冬する年1世代の生活史を持つことを明らかにしたが、その後は新しい知見を報告するに至っていない。
20060824blog  2004年にこちらに転勤し、露地野菜の害虫に対する捕食性天敵としてオオハサミムシを研究材料として扱うことができるようになったことは、全く思いがけないことだった。これを機会に、日本におけるオオハサミムシの生活史を明らかにしたいところだ。
 今日ハサミムシ類を話題に出したのは、 安田守さんのブログを発見したからだ。読んでみたら、ハサミムシファンだと告白されている。是非とも情報交換をお願いしたいところだ。写真も素晴らしい。自分が撮った写真をこのブログに貼付けるのが恥ずかしくなるぐらいだ。

参考文献

  • 河野勝行. 1984. コブハサミムシの特異な生活 —生活史戦略的視点から—.遺伝 38 (10): 70-75.
  • 河野勝行. 1993. 盛岡市におけるクギヌキハサミムシForficula tomis (Kolenati)の生活史.東北昆虫 31: 4-5.
  • Kohno K. 1997. Possible influences of habitat charasteristics on the evolution of semelparity and cannibalism in the hump earwig Anechura harmandi. Researches on Population Ecology 39 (1): 11-16. [PDF]

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コメント

こんばんわ。
ちょっと、ハサミムシについて質問させてください。

現在、4種のハサミムシを飼育しています。
エジプト産・ヒゲジロ・ハマベ・クギヌキです。

クギヌキについですが。
これだけは、どうしてもベスト環境が分かりません。
お腹は太っているのに、餌を食べてないよです。。
どんどん死んでいきます。
どこに起因するものでしょうか?

他の種は全然問題ないのですが。。
不思議です。

投稿: 髭蟲 | 2011年10月 8日 (土) 22時07分

髭蟲さん、はじめまして。
クギヌキハサミムシの飼育経験はありませんが、同じクギヌキハサミムシ科のコブハサミムシの場合は植物性の餌、例えば花の花粉などもよく食べますので、クギヌキハサミムシの場合も植物性の餌を与える必要があるかも知れません。花粉を食べていたのかどうかはわかりませんが、クギヌキハサミムシの3齢幼虫がアザミの花の中に潜り込んでいるのを見たことがあります。

投稿: Ohrwurm | 2011年10月 8日 (土) 22時25分

情報ありがとうございます。

なるほど。
花ですか。
どうやらハサミムシは食性から2種に分けれるようですね。
エジプト産ハサミムシのイメージが強すて目暗になっていたようです。

今度、別館のほうに記事をアップしたて行きたいと思います。
凄いハサミを持った個体がいたのですが。。
西川氏の写真を拝見すると、もしかするとメスだったのかもしれません。
謎は深いです。

この頃、オオヒョウタンゴミムシの飼育を始めました。
繁殖と冬越えを目指して頑張ります。

ナメクジ好きの髭蟲でした。(笑)

投稿: 髭蟲 | 2011年10月 9日 (日) 22時55分

髭蟲さん、ハサミムシの食性は簡単に二分法的に分類できるわけではありません。基本的には雑食性で、その中に捕食性の傾向が強いものもあれば、食植性の傾向の強いものもありますし、さらに菌食性の強いものもあります。
ところで、エジプト産のハサミムシは許可を得て飼育されているのでしょうか?植物防疫法の観点からも、外来種の移入という観点からも、問題があると思います。

投稿: Ohrwurm | 2011年10月10日 (月) 08時21分

なるほど。
そう単純じゃなさそうですね。
勉強させてもらいます。

えっ?
エジプト産のハサミムシには問題があったのですか…。
許可は得てません。
ビッターズで普通にアップされていたので、問題はないと思ってました。

でも、実際は滅亡寸前でして。。
もう駄目だと思ってます。
残り2~3匹です。
許可が必要な生き物(虫)は実際は多いんでしょうね。

ナメクジなどは極端です。
私の子供のころは見かけたことのなかったチャコウラナメクジ。
今は日本産を凌駕してしまったようです。

考えてみれば、外来種の扱いには細心の注意が必要です。
どうしても、手軽に手に入るのでその辺の注意力が緩慢になります。
学者先生とアマチュア飼育者の違いはその辺にもあるようです。
反省です。

ところで、きょうクギヌキハサミムシが地表に卵を産んでました。
木片の下になっています。
あまり手出しをせずに、自然(お母さん)に任せようと思います。
何とか頑張ってほしいです。(頑張ります)

先生はナメクジ飼育はなされるんですか?
きょう、ヤマナメクジが卵を2個生んでました。
チビばかりで彼女に釣り合う個体はいません。
以前には居たのですが、数か月前に死んでしまいました。

他の種でいえば無精卵のような、そんなことが起きうるんでしょうか?
この卵は多分育たないと思います。

これからもお世話になります。
よろしくお願いいたします。
厚かましくてご免なさい。^^
(クギヌキの卵の写真は別館にアップします。)

投稿: 髭蟲 | 2011年10月15日 (土) 21時23分

髭蟲さん、こんにちは。
 外国産の虫の件ですが、クワガタなどは植物防疫法での規制が解除されましたが、ハサミムシは対象ではなかったと思います。ボクは行政の人間ではないので正しい知識がなく回答はできませんが、ダメのような気がします。研究者は許可が必要な外国産の虫を飼育する場合は、植物防疫所の許可を得て飼育します。
 飼育の件ですが、ボクは子供の頃は蝶の飼育をよくしていましたが、仕事をするようになってからは、仕事以外の飼育はほとんどしていません。飼育をするより、野外で生き物を見る方がずっと楽しいと思っています。何より自然の方が良いと思っていますから。

投稿: Ohrwurm | 2011年10月16日 (日) 21時05分

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